り
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・墓から墓へ夕蜘蛛が網を張らうとする
・墓に紫陽花咲きかけてゐる
・夕焼小焼牛の子うまれた
・家をめぐり蛙なく新夫婦である
[#ここで字下げ終わり]
七月九日
空は霖雨、私は不眠、相通ずるものがあるやうだ。
あの晩からちつとも飲まないので、一杯やりたくなつた!
星城子さんの厚情によつて、飯田さん仙波さん寄与の懐中時計が到着した、私が時計を持つといふことは似合はないやうでもあるが、すでに自分の寝床をこしらへつゝある今日、自分の時計を持つことは自然でもあらう(その時計の型や何かは、私の望んだほど時代おくれでもなくグロテスクでもなけれど、三君あればこそ私の時計があつたのである、ありがたい/\、たゞ口惜しいのはチクタクがちよい/\と睡ることである、まさか、私のところに来たといふので、酔つぱらつたのでもあるまい!)。
動かない時計はさみしく、とまる時計はいらだゝしいものである。
うれしいたよりが二つあつた、樹明君から、そして敬治君から。
花ざくろを活ける、美しい年増女か!
石を拾ふついでに、白粉罎を拾うた、クラブ美の素といふレツテルが貼つてあつた、洗つても洗つてもふくいく[
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