ゝ晴れてくる。
痔[#「痔」に傍点]がよくなつた、昨春以来の脱肛が今朝入浴中ほつとりとおさまつた、大袈裟にいへば、十五ヶ月間反逆してゐた肉塊が温浴に宥められて、元の古巣に立ち戻つたのである、まだしつくりと落ちつかないので、何だか気持悪いけれど、安心のうれしさはある。
とにかく温泉の効験があつた、休養浴泉の甲斐があつたといふものだ、四十日間まんざら遊んではゐなかつたのだ。
建ちさうで建たないのが其中庵でござる[#「建ちさうで建たないのが其中庵でござる」に傍点]、旅では、金がなくては手も足も出ない。
ゆつくり交渉して、あれやこれやのわずらひに堪へて、待たう待たう、待つより外ない。
臭い臭い、肥臭い、こゝでかしこで肥汲取だ、西洋人が、日本は肥臭くて困るといふさうだが、或る意味で、我々日本人は糞尿の中に生活してる[#「我々日本人は糞尿の中に生活してる」に傍点]!
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・朝の道をよこぎるや蛇
・朝しづくの一しづくである
□
田植じまひは子を連れて里へ山越えて
□
・梅雨あかり、ぱつと花のひらきたる
□
・鯉の児放つや青田風
・曇の日、釣りあげたはいも
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