り寝たり、そして夕方、うれしげに帰つてゆく、田園風景のほがらかな一面[#「田園風景のほがらかな一面」に傍点]をこゝに見た。
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・いつしよに伸べた手白い手恥づかしい手
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・温泉《イデユ》掘る音の蔦の実
みんな売れた野菜籠ぶら/\戻る
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・なぐさまないこゝろを山のみどりへはなつ
・家のまはり身のまはり蛙蛙
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七月四日
晴、一片の雲もない日本晴。
発熱、頭痛、加之歯痛、怏々として楽しまず、といふのが午前中の私の気分だつた。
裏山から早咲の萩二枝を盗んで来て活ける、水揚げ法がうまくないので、しほれたのは惜しかつた。
萩は好きな花である、日本的だ、ひなびてゐてみやびやかである、さみしいけれどみすぼらしくはない、何となく惹きつける物を持つてゐる。
訪ねてゆくところも訪ねてくる人もない、山を家とし草を友とする外ない私の身の上だ。
身許保證(土地借入、草庵建立について)には悩まされた、独身の風来坊[#「独身の風来坊」に傍点]には誰もが警戒の眼を離さない、死病にかゝつた場合、死亡した後始末の事まで心配してくれるのだ!
当家の老主人
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