がやつてきて、ぼつり/\話しだした、やうやく私といふ人間が解つてきたので保證人にならう、土地借入、草庵建立、すべてを引受けて斡旋するといふのだ、晴、晴、晴れきつた。
豁然として天地玲瓏、――この語句が午後の私の気分をあらはしてゐる。
それにしても、私はこゝで改めて「彼」に感謝しないではゐられない、彼とは誰か、子であつて子でない彼、きつてもきれない血縁のつながりを持つ彼の事だ!
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・山路はや萩を咲かせてゐる
・ゆふべの鶏に餌をまいてやる父子《オヤコ》で
・明日は出かける天の川まうへ
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夜ふけて、知友へ、いよ/\造庵着手の手紙を何通も書きつゞけてゐるうちに、何となく涙ぐましくなつた、ちようど先日、彼からの手紙を読んだ時のやうに、白髪のセンチメンタリストなどゝ冷笑したまふなよ。
とう/\今夜も徹夜してしまつた。

 七月五日

曇、后晴、例の風が吹くので、同時に不眠の疲労があるので、小月行乞を見合せて籠居。
きのふのゆふべの散歩で拾うてきた蔓梅一枝(ねぢうめともいふ)を壺の萩と※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28
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