が俳句の母胎だ。
時代を超越したところに、目的意識を忘却したところに、いひかへれば歴史的過程にあつて、しかも歴史的制約を遊離したところに、芸術(宗教も科学も)の本質的存在がある、これは現在の私の信念だ。
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 さみしい夜のあまいもの食べるなど
・何でこんなにさみしい風ふく
・手折るよりぐつたりしほれる一枝
・とりきれない虱の旅をかさねてゐる
・雨にあけて燕の子もどつてゐる
 縞萱伸びあがり塀のそと
 いちめんの蔦にして墓がそここゝ
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ロマンチツク――レアリスチツク――クラシツク――そして、何か、何か、何か、――そこが彼だ。

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我昔所造諸惑[#「惑」に「マヽ」の注記]業  皆由無始貪瞋痴
従身口意之所生  一切我今皆懺悔
衆生無辺誓願度  煩悩無尽誓願断
法門無量誓願学  仏道無上誓願成
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 七月二日 同前。

雨、いかにも梅雨らしい雨である、私の心にも雨がふる、私の身心は梅雨季の憂欝に悩んでゐる。
入浴、読経、漫読、思索、等、等、等。
発熱頭痛、まだ寝冷がよくならないのである、歯がチクチクいた
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