しかもムチヤクチヤにはなりきれないのだ。
何といふみじめな人間だらうと自分を罵つた、――こんなにしてまで、私は庵居しなければならないのでせうか――と敬治君に泣言を書きそへた。
六月廿九日
晴、寝床からおきあがれない、悪夢を見つゞける外ない自分だつた。
寝てゐて、つく/″\思ふ、百姓といふものはよく働らくなあ、働らくことそのことが一切であるやうに働らいてゐる。
私は悔恨の念にたへなかつた。
六月卅日 同前。
曇、今日も門外不出、すこしは気軽い。
あさましい夢を見た(それは、ほんとうにあさましいものだつた、西洋婦人といつしよに宝石探検に出かけて、途中、彼女を犯したのだ!)。
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・かつと日が照り逢ひたうなつた
[#ここで字下げ終わり]
私は、善良な悪人[#「善良な悪人」に傍点]に過ぎない。……
△ △ △ △
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自戒三条
一、自分に媚びるな
一、足らざるに足りてあれ
一、現実を活かせ
[#ここで字下げ終わり]
いつもうまい[#「うまい」に傍点]酒を飲むべし、うまい酒は多くとも三合を超ゆるものにあらず、自他共に喜ぶなり。
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