の注記]寺境内、雪舟築くところ――を改めて鑑賞する、自然を活かす[#「自然を活かす」に傍点]、いひかへれば人為をなるたけ加へないで庭園とする点に於てすぐれてゐると思ふ、つゝじとかきつばたとの対照融和である(萩が一株もう咲いてゐた)。
門前の老松もよいが、大タブもよい、その実はうれしいものだ。
午後はあてどもなく山から山へ歩く、雑草雑木[#「雑草雑木」に傍点]が眼のさめるやうなうつくしさだ、粉米のやうな、こぼれやすい花を無断で貰つて帰つた。
おばさんが筍を一本下さつた、うまい、うまい筍だつた、それほどうまいのに焼酎五勺が飲みきれなかつた!(明日は間違なく雨だよ!)
ほんたうに酒の好きな人に悪人がゐないやうに、ほんたうに花を愛する人に悪人はゐないと思ふ。
改造社の俳句講座所載、井師の放哉紹介の記録を読んで、放哉は俳句のレアリズムをほんたうに体現した最初の、そして或は最大の俳人であると今更のやうに感じたことである。
『刀鋒を以て斬るは敗る、刀盤を以て斬るは勝つ』捨身剣[#「捨身剣」に傍点]だ、投げだした魂の力を知れ。
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    緑平老に
・ひさしぶり逢へたあんたのにほひ
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