雨につけ風につけ、私はやつぱりルンペンの事を考へずにはゐられない、家を持たない人、金を持たない人、保護者を持たない人、そして食慾を持ち愛慾を持ち、一切の執着煩悩を持つてゐる人だ!
ルンペンは固より放浪癖にひきずられてゐるが、彼等の致命傷は、怠惰[#「怠惰」に傍点]である、根気がないといふことである、酒も飲まない、女も買はない、賭博もしない、喧嘩もしない、そしてたゞ仕事がしたくない[#「仕事がしたくない」に傍点]、といふルンペンに対しては長大息する外ない、彼等は永久に救はれないのだ。
今日も焼酎一合十一銭、飛魚二尾で五銭、塩焼にしてちびり/\、それで往生安楽国!
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・夏めいた灯かげ月かげを掃く
・障子に箒の影も更けて
・わいてあふれるなかにねてゐる
・生えてあやめの露けく咲いてる
    □
・重さ、かきなやむ四人の大地
  魚店風景
 ならべられてまだ生きてゐる
    □
・笠ぬげば松のしづくして
    □
・しぼんだりひらいたりして壺のかきつばた
・こゝろふさぐ夜ふけて電燈きえた(事実そのものをとつて)
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 六月廿一日 同前。

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