へた――搾取[#「搾取」に傍点]といふよりも詐取[#「詐取」に傍点]だ、いかにも殊勝らしく、或る時は坊主らしく、或る時は俳人らしくカムフラーヂユして余命を貪つてゐるのではないか。
法衣を脱ぎ捨てゝしまへ、俳句の話なんかやめてしまへよ。
それにしても、やつぱりさみしい、さみしいですよ。
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さみしいからだをずんぶり浸けた
・水田青空に植ゑつけてゆく
人の声して山の青さよ
・一人で黙つて植ゑてゐる
夏草いちめんの、花も葉も刈り
・とう/\道がなくなつた茂り
・ひとりきてきつゝき(啄木鳥)
・こゝの土とならうお寺のふくろう
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六月十八日 同前。
快晴、梅雨季には珍らしいお天気でもあるし、ちようど観音日でもあるので、狗留孫山へ拝登、往復六里、山のよさ、水のうまさを久しぶりに味つた。
道を間違へて、半里ばかり岨路を歩いたのは、かへつてうれしかつた、岩に口づけて腹いつぱい飲んだ水、そのあたりいちめんにたゞようてゐる山気、それを胸いつぱい吸ひこんだ、身心がせいせいした。
狗留孫山修禅寺、さすがに名刹だけあるが、参詣者が多いだけそれだけ俗化してゐ
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