貨幣は勤労の表徴[#「勤労の表徴」に傍点]として尊いのである、物の価値は物そのものにある[#「物の価値は物そのものにある」に傍点]。
今日といふ今日は、私として、最も有効に金を遣つたと思ふ。
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・働らき働らき牛を叱つて
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数日たまつてゐた返事を書いてだしたので、ほつとした、はがき十枚、手紙弐通。
五日ぶりに酒を飲んだが、あんまりうまくなかつた、うれしいやうでもあり、さびしいやうでもある、とにかく酒を清算することが私を清算することの第一歩であることはたしかだ。
久しぶりに、ほんたうに久しぶりに、今夜は水を飲んだ、うまくない水である、だいたい、川棚といふところは水がよくない、飲める井戸は数ヶ所しかない、これからは谷川の水を飲まう、水は私を清浄にする、私の生活から、むしろ、私の心から水をとりのぞけば、私はきたなくなるばかりだ。

 六月十七日 同前。

梅雨日和、終日読書、さうする外ないから。
アイバチといふ魚を買つた、十銭、うまくていやみがなかつた(ナマクサイモノを食べたのは、何日目だつたかな)、そしてうどん玉二つ、五銭、これもおいしかつた、今
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