つた。
朝、宿の主人が、昨夜の寺惣代会では、私の要求は否定されたといふ、私はしみ/″\考へた、そして嫌な気がした、自然と人間、個人と大地。……
野を歩いて青蘆を切つて来て活けた、何といふすが/\しさ、みづ/\しさぞ、野の草はみんなうつくしい、生きてゐるから。
つばくろがよくうたふ、此宿にも巣をかけて雛をかへしてゐる。
此宿もいろ/\の生き物を持つてゐる――人間の子、猫の子、燕の子、牛、私、そして花嫁さん!
彼女から送つてくれた荷物が来た、フトン、ヤクワン、キモノ、ホン、チヤワン、ヰハイ、サカヅキ、ホン、カミ、等、等、等。
その荷物の中から二通の手紙が出て来た、一つは彼に送金した為替の受取、他の一つはS子からのたより、前者はともかくも、後者はちよんびり私を動かした、悪い意味に於て、――なるほど、私は彼女が書いてゐるやうに、心の腐つた人[#「心の腐つた人」に傍点]であらうけれど、――これは故意か偶然か、故意にしては下手すぎる、私には向かない、偶然にしてはあまりに偶然だ。
子供が子猫をおもちやにして遊んでゐる、その子猫は首玉を握りしめられて半死半生になつてゐる、小さい暴君と小さい犠牲、人間の
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