いや無一文になつてしまつた、SさんGさんに約束した肌身の金もちびりちびり出してゐたら、いつのまにやら空つぽになつてしまつてゐる、これでよい、これでよいのだ、明日からは本気で行乞しよう、まだ/\袈裟を質入しても二三日は食べてゐられるが。
酒飲みは悪い酒を飲み、茶好きはよい茶を好む、前者では量、後者では質が第一の関心事らしい。
かう腹工合が悪くては困つたものだ、これでは行乞相まで悪くなる、姿勢がくづれる、声が出なくなる、眼が光りだす、腹が立ちやすくなる。……
今夜も寝つかれなくて、下らない事ばかり考へてゐた、数回目の厠に立つた時はもう五時に近かつた(昨夜は二時)。

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四月七日[#「四月七日」に二重傍線] 曇、憂欝、倦怠、それでも途中行乞しつゝ歩いた、三里あまり来たら、案外早く降りだした、大降りである、痔もいたむので、見つかつた此宿へ飛び込む、楠久、天草屋(二五・中)
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ずゐぶんうるさい宿だ、子供が多くて貧乏らしい、客間は二階だが、天井もなければ障子もない、せんべいふとんが二三枚あるだけだ(畳だけは畳らしい)、屋根裏のがら
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