しない、藁筵が被せてある、――まつたく野風呂[#「野風呂」に傍点]である、空の下で湯の中にをる感じ、なか/\よかつた、はいらうと思つたつてめつたにはいれない一浴だつた。
同宿二人、男は鮮人の飴屋さん(彼はなか/\深切だつた、私に飴の一塊をくれたほど)、女は珍重に値する中年の醜女、しかも二人は真昼間隣室の寝床の中でふざけちらしてゐる、彼等にも春は来たのだ、恋があるのだ、彼等に祝福あれ。
今夜もたび/\厠へいつた、しぼり腹を持ち歩いてゐるやうなものだ、二三日断食絶酒して、水を飲んで寝てゐると快くなるのだが、それがなか/\出来ない!
層雲四月号所載、井師が扉の言葉『落ちる』を読んで思ひついたが――落ちるがまゝに落ちるのにも三種ある、一はナゲヤリ(捨鉢気分)二はアキラメ(消極的安心)三はサトリ(自性徹見)である。
世間師には、たゞ食べて寝るだけの人生しかない!
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岩を掘り下げる音の春日影
・植ゑられてもう芽ぐんでゐる
・明日はひらかう桜もある宿です(木賃宿)
酒がやめられない木の芽草の芽
・旅の法衣に蟻が一匹
まッぱだかを太陽にのぞかれる(野風呂)
旅やけの手のさ
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