つくしいこと
[#ここで字下げ終わり]
恋塚といふ姓、夫婦株式会社といふ看板、町内規約に依り押売・物貰・寄附一切御断りといふ赤札。
今晩は飲みすぎた、地球が急速度で回転した、私自身も急速度で回転した、一切が笑つた、踊つた、歌つた、そして消滅してしまつた!(此貨幣換算価値五十五銭)
酔ひざめの夢を見た、息づまるほど悲しい夢だつた、あゝ生れたものは死ぬる、形あるものはくづれる、逢へば別れなれけばならない、――しかし、あゝ、しかしそれは悲しいことである。
三月三十日[#「三月三十日」に二重傍線] 晴、宿酔気味で滞在休養。
旅なればこそ、独身なればこそである、ありがたくもあり、ありがたくもない。
此宿には子供が多い、朝から喧嘩で、泣いたり喚いたり、いやはやうるさいことである、母親は子供をどなるために生存してゐるやうだ。
昨夜は酔うたけれど脱線しなかつた、脱線料がないからでもあつたらうが、多少心得がよくなつたからでもあらう(脱線してはならないのを、いひかへれば、脱線することが出来ないのを脱線するのが、脱線の脱線たるところだから)。
行乞雑感の一つとして、――腹が立たないことの二種[#「腹が
前へ
次へ
全150ページ中81ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング