与へられるだけ、与へられるまゝに受けるべき行乞でなければならない、行乞はほんたうにむづかしいと思ふ。
こゝには滞在しすぎた、シケたゝめでもある、病んだゝめでもある、しかしだらしなかつたゝめでもある、明朝は是非出立しよう。
夜に入つてからまた雨となつた、風さへ加はつた、雨は悪くないけれど、風には困る、雨は身心を内に籠らせる、風は身心を外へ向はしめる、風は法衣を吹きまくるやうに、私自身をも吹きまくる、旅人に風はあまりに淋しい。
今夜の同宿者はタケの三人連れ(タケとは尺八の事、随つて虚無僧の事)、何の彼のと喧嘩ばかりしてゐる、他の男は家出した息子を探してゐるといふ、こゝにも性の問題、血縁の問題がある、私は気の毒に思ふと同時にあさましく感じる。
独り住むほど寂しきはなくまた安らけきはない、そして私に於てはその安らかさが寂しさを償うて余りあり。……
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三月廿九日[#「三月廿九日」に二重傍線] からりと晴れてゐる、まだ腹工合はよくないが、いよいよ出立した、停滞する勿れ、行程三里、相ノ浦、川添屋(三〇・中)
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物乞ふとシクラメンのう
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