さい子供を四人も連れてゐる、無智と野卑と焦燥とを憐れまずにはゐられない。

 三月四日[#「三月四日」に二重傍線] 晴、市中行乞、滞在、宿は同前。

九時半から二時半まで第一流街を行乞した、行乞相は悪くなかつた、所得も悪くなかつた。
何となく疲労を感じる、緑平老の供養で一杯やつてから活動へ出かける、妻吉物語はよかつた、爆弾三勇士には涙が出た、頭が痛くなつた、帰つて床に就いてからも気分が悪かつた。
戦争――死――自然、私は戦争の原因よりも先づその悲惨にうたれる、私は私自身をかへりみて、私の生存を喜ぶよりも悲しむ念に堪へない。
此宿は便利のよい点では第一等だ、前は魚屋、隣は煙草屋、そして酒屋はついそこだ、しかも安くて良い酒だ、地獄と極楽とのチヤンポンだ。
一年中の好季節となつた、落ちついて働きたい!

 三月五日[#「三月五日」に二重傍線] すべて昨日のそれらとおなじ。

大隈公園といふのがあつた、そこは侯の生誕地だつた、気持のよい石碑が建てられてあつた、小松の植込もよかつた、どこからともなく花のかをり――丁字花らしいにほひがたゞようてゐた、三十年前早稲田在学中、侯の庭園で、侯等といつしよ
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