行乞しなかつた、留置の来信を受取つたら、もう何もしたくなくなつた、それほど私の心は友情によつてあたゝめられ、よわめられたのである。
或る友に、――どうやら本物の春が来たやうですね、お互にたつしやでうれしい事です、私は先日来ひきつゞいての雪中行乞で一皮脱ぐことが出来ましたので、歩いても行乞しても気分がだいぶラクになりました、云々。
緑平老の手紙は私を泣かせた、涙なしには読みきれない温情があふれてゐる、私は友として緑平老其他の人々を持つてゐることを不思議とも有難すぎるとも思ふ。
途中、或る農家でお茶をよばれたが、薩摩芋を強ゐられたには閉口した、あまり好きではないけれど、いや、むしろ嫌いな方だけれど、それは深切そのものなので、二切三切食べたが、胸がやけて困つた。
佐賀へは初めて来たが、市としては賑ふ方ぢやない、しかし第一印象は悪くなかつた。
湯屋の看板に『一浴心広体胖』、大盛うどん屋の立額に『はたらかざる人はくふべからず』。
昨夜はよい宿よい酒だつた、此宿もよくないとはいへないが、うるさくて、おち/\酒も飲めない。
同宿七人(例の二人連れの猿まはしさんとまた泊り合せた)、その中の遍路夫婦は小
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