地方は二月一日のお正月だ、お正月が三度来る、新のお正月、旧のお正月、――お正月らしくないお正月が三度も。
共同餅搗は共同風呂と共に村の平和を思はせる。
勝鴉(神功皇后が三韓から持つて帰つたといふ)が啼いて飛ぶのを見た、鵲の一種だらう。
歩く、歩く、死場所を探して、――首くゝる枝のよいのをたづねて!
[#ここから2字下げ]
飯盛山福泉寺(解秋和尚主董、鍋島家旧別邸)
[#ここで字下げ終わり]
山をそのまゝの庭、茅葺の本堂書院庫裏、かすかな水の音、梅の一二本、海まで見える。
猫もゐる、犬もゐる、鶏も飼つてある、お嬢さん二人、もろ/\の声(音といふにはあまりにしづかだ)。
すこし筧の匂ひする山の水の冷たさ、しん/\としみいる山の冷え(薄茶の手前は断はつた)、とにかく、ありがたい一夜だつた。
一月廿九日[#「一月廿九日」に二重傍線] 曇后晴、行程三里、武雄、油屋(三〇・中)
朝から飲んで、その勢で山越えする、呼吸がはずんで一しほ山気を感じた。
千枚漬はおいしかつた(この町のうどんやで柚子味噌がおいしかつたやうに)。
解秋和尚から眼薬をさしてもらつた(此寺へは随分変り種がやつてくるさうな、
前へ
次へ
全150ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング