兵衛でもないやうだつた、呵々。
第二十八番の札所常安寺は予期を裏切つて詰らない禅寺だつた(お寺の方々は深切だつたけれど)、門前まで納屋がせりこんでゐて、炭坑寺[#「炭坑寺」に傍点]とでもいはうか。
どこを歩いても人間が多い、子供が多過ぎる。
朝早いのは鶏と子供だ。
[#ここから2字下げ]
・ふりかへる領巾振山はしぐれてゐる
・枯草の長い道がしぐれてきた
・ぐるりとまはつて枯山
・枯山越えてまた枯山
[#ここで字下げ終わり]

 一月廿七日[#「一月廿七日」に二重傍線] 雨、曇、晴、行程三里、莇原《アザミバル》、若松屋(二五・中)

同宿の老人が早いので、私も六時前に起きた、九時まで読書、沿道を行乞しながら東へ向ふ、雨はやんだが風がでた、笠を吹きとばすほどである、ヨリ大声でお経をあげながら流して歩く、相当の所得はあつたので安心する。
此地方はどこも炭坑街で何となく騷々しくてうるさい、しかし山また山の姿はうれしい、海を離れて山にはいつたといふ感じはよい。
相知の街に、千里眼人事百般鑑定といふ看板がかけてあつた。
或る商家の前でグラ/\した、近来めづらしい腹立たしさであつた。
けふのおひるは
前へ 次へ
全150ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング