関策進を読む、読むだけが、そして飲むだけがまだ残つてゐる。
毎日赤字が続いた、もう明日一日の生命だ、乞食して存らへるか、舌を噛んで地獄へ行くか。……
こゝは坊主枕なのがうれしい、茣座枕は呪はれてあれ! こんな一些事がどんなに孤独の旅人を動かすかは、とても第三者には解りつこない。
床をならべた遍路さんから、神戸の事、大阪の事、京都の事、名古屋の事、等、等を教へられる、いゝ人だつた、彼は私の『忘れられない人々』の一人となつた。

 十二月廿七日[#「十二月廿七日」に二重傍線] 晴后雨、市街行乞、大宰府参拝、同前。

九時から三時まで行乞、赤字がさうさせたのだ、随つて行乞相のよくないのはやむをえない、職業的[#「職業的」に傍点]だから。……
大宰府天満宮の印象としては樟の老樹ぐらいだらう、さん/″\雨に濡れて参拝して帰宿した。
宿の娘さん、親類の娘さん、若い行商人さん、近所の若衆さんが集つて、歌かるたをやつてゐる、すつかりお正月気分だ、フレーフレー青春、下世話でいへば若い時は二度ない、出来るだけ若さをエンヂヨイしたまへ。

 十二月廿八日[#「十二月廿八日」に二重傍線] 晴、汽車で四里、酒壺
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