を想ふ。
唐津といふところは、今年、飯塚と共に市制をしいたのだが、より多く落ちつきを持つてゐるのは城下町だからだらう。
松原の茶店はいゝね、薬罐からは湯気がふいてゐる、娘さんは裁縫してゐる、松風、波音。……
受けとつてはならない一銭をいたゞいたやうに、受けとらなければならない一銭をいたゞかなかつた。
江[#「江」に「マヽ」の注記]雲流水、雲のゆく如く水の流れるやうであれ。
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・初誕生のよいうんこしたとあたゝめてゐる
・松に腰かけて松を観る
・松風のよい家ではじかれた
[#ここで字下げ終わり]
此宿はおちついてよろしい、修行者は泊らないらしい、また泊めないらしい、しかし高い割合にはよくない、今夜は少し酔ふほど飲んだ、焼酎一合、酒二合、それで到彼岸だからめでたし/\。
虹の松原はさすがにうつくしいと思つた、私は笠をぬいで、鉄鉢をしまつて、あちらこちら歩きまはつた、そして松――松は梅が孤立的に味はゝれるものに対して群団的に観るべきものだらう――を満喫した。
げにもアルコール大明神の霊験はいやちこだつた、ぐつすり寝て、先日来の不眠をとりかへした。

 一月廿日[#「一月廿
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