字下げ]
 初夏の水たたへてゐる
 雲がない花の散らうとしてゐる
 柿の若葉が見えるところで寝ころぶ
 けふのみちも花だらけ
・わらや一つ石楠花を持つ
[#ここで字下げ終わり]
途上で、蛇が蛙を呑まうとしてゐるのを見た、犬養首相暗殺のニユースを聞かされた。

 五月十七日[#「五月十七日」に二重傍線] 十八日 十九日 降つたり吹いたり晴れたり、同じ宿で。

仏罰覿面、痔がいたんで歩けないので休養、宿の人々がまたよく休養させてくれる、南無――。
同宿の同行はうれしい老人だつた、酒好きで、不幸で、そして乞食だ!
何といふ山のうつくしさだらう、このあたりに草庵を結ばうかと思つたほどのうつくしさだつた。
終日黙想、労れたら寝た、倦いたら読んだ、曰く、講談本、――新撰組、相馬大作、等、等、等。
自動車パンク、そしてガソリン発火、こんな山村にもこんな事件が起つた、そして狂人、そして死人。……
晴、風、そして雨、それがホントウだ。
またこゝで、一皮脱ぎました、たしかに一皮だけは。

 五月廿日[#「五月廿日」に二重傍線] 曇、行程四里、正明市、かぎや(三〇・中)

いや/\歩いて、いや/\ホイトウ、
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