つてくる、からだをすりよせる、しかし私はお前にあげるものを持たない、すまないね。
どうでもといはれて、病人のために読経した、慈眼視衆生、福聚海無量、南無観世音菩薩、彼に幸あれ。
今年はじめての松露を見た(店頭で)、松原らしい気分になつた、私もすこし探したが一個も見つからなかつた。
松に風なく松露が。……
うるふ[#「うるふ」に傍点]といふ宿場はちつともうるほさなかつた。
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 すこし濁つて春の水ながれてくる
・旅人のふところでほんにおとなしい児
・春の街並はぢかれどほしでぬけた
・あたゝかい小犬の心がようわかる
 春のくばりものとし五色まんぢゆう
   再録
・朝からの騷音へ長い橋かゝる
・松はおだやかな汐鳴り
・遍路たゞずむ白浪おしよせる
・わびしさは法衣の袖をあはせる
    □
・旅の或る日の松露とる
 花ぐもりのいちにち石をきざむばかり
[#ここで字下げ終わり]
此宿はよい、家の人がよい、そして松風の宿だ、といふ訳でずゐぶん飲んだ、そしてぐつすり寝た、久しぶりの熟睡だつた、うれしかつた。
途中、潤(うるふ)といふところがあつた、うるほさないところだつた。

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