を感じる日、生きてゐるよろこび、死なゝいよろこび。

――昨夜の事を考へると憂欝になる、彼女の事、そして彼の事、彼等に絡まる私の事、――何となく気になるのでハガキをだす、そして風呂へゆく、垢も煩らひも洗ひ流してしまへ(ハガキの文句は、……昨夜はすまなかつた、酔中の放言許して下さい、お互にあんまりムキにならないで、もつとほがらかに、なごやかに、しめやかにつきあはふではありませんか、……といふ意味だつたが)。
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 お正月も暮れてまだ羽子をついてゐる
・お正月のまんまるいお月さんだ
 夕闇せまりくる独馬をたゝかはせてゐる
 おとなしく象は食べものを待つばつかり(有田洋行会所見二句)
 食べものに鼻がとゞかない象は
 水仙けさも一りんひらいた
・とりとめもなく考へてゐる水仙のかほり
 考へてをる水仙ほころびる
 水仙ひらかうとするしづけさにをる
・いやな夢見た朝の爪をきる
 寝る前の尿する月夜ひろ/″\
 よい月夜のび/\と尿するなり
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当座の感想を書きつけておく。――
恩は着なければならないが、恩に着せてはならない、恩を着せられてはやりきれない。
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