うにすまないと思ひながらも)。
さきころまでは何を食べても――水を飲んでさへも――塩つぽく感じたのに、けふこのごろは、何を食べても甘たらしく感じる、何の病気だらうか、しかし近来の私は健康である、今夜も馬酔木居で、肥えたといはれたが、なるほど、私は肥えた、手首を握つて見るに、今までにない大きさである。……
通信費が多いのには閉口する、こゝへ移つてから、転居の通知やら、年始状やらで、もう葉書を百五十枚ぐらいは買つたらう、これではとてもやりきれない(生活費の三割以上を占めるやうになる)、早く三八九を出して、それを利用したい。
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先祖代々菩提とぶらふ水仙の花
酔へばけふもあんたの事(緑平さんに)
・うまい手品も寒い寒い風
正月二日の金峰山も晴れてきた
お正月の熊本を見おろす
・もう死ぬる声の捨猫をさがす
自動車も輪飾かざつて走る
持てるものみんな持つて歩いてゐる(老遍路さん)
よい月の葉ぼたんのよさ
追加二句
・訪ねる人もゐない街のぬかるみ
闇をつらぬいて自動車自動車
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一月三日[#「一月三日」に二重傍線] うらゝか、幸福
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