話した、元寛さんは元寛さんのやうに、馬酔木さんは馬酔木さんのやうに、どちと[#「ちと」に「マヽ」の注記]もすぐれた魂を持つてゐられる。……
元寛さんから餅と数の子とを貰つた、ありがたかつた。
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二本三銭の梅が咲きはじめた
・明日はお正月の数の子まで貰つた
・ぐるりとまはつてまたひとりになる
霜枯れの菊の枯れざま
・霜の大地へコマぶつつける
洟垂息子の独馬[#「馬」に「マヽ」の注記]は強いな
降つてきたのは煤だつた
畠の葉ぼたんのよう売れてさみしくなる
夕ざれは豆腐屋の笛もなつかしく
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十二月卅一日[#「十二月卅一日」に二重傍線] 曇つて寒い、暮れてからは雨になつた、今年もおしまひだ。
嚢中に四銭しかない、三銭で入浴、一銭でヒトモジ一把、文字通りの無一物だ、いかに私でも――師走がない正月がない私でも困るので、夕方、寥平さんを訪ね、事情を明かして少し借りる、いや大いに掠める、寥平さんのすぐれた魂にうたれる。……
見切の白足袋一足十銭、水仙一本弐銭、そして酒一升一円也、――これで私の正月支度は出来た、さあ正月よ、やつてこい!
人
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