に二重傍線] 風は冷たいけれど上々吉のお天気、さすがに師走らしい。
私は刻々私らしくなりつゝある、私の生活も日々私の生活らしくなりつゝある、何にしてもうれしい事だ、私もこんどこそはルンペンの足を洗ふことが出来るのだ。
草鞋のかろさと下駄のおもさとを考へる、殊に足駄をひきずつて泥濘を歩くと、すぐ足が痛くなり腫れあがつて歩けなくなる、長袖を着て下駄を穿いて活動が出来るものか。
師走の人ごみにまじつて、ぶら/\歩く、買う銭もなければ、あまり買ひたいものもない、あんまりのんき[#「のんき」に傍点]な師走の私かな。
私には師走もなければ、したがつて正月もない、気取つていへば、毎日が師走でもあり正月でもある。
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あんな夢を見たけさのほがらか
けさも一りん開いた梅のしづけさ
鐘が鳴る師走の鐘が鳴りわたる
・街は師走の広告燈の明滅
・仲よい夫婦で大きな荷物
飾窓の御馳走のうつくしいことよ
うつくしう飾られた児を見せにくる
寒い風の広告人形がよろめく
朝日まぶしい餅をいたゞく
[#ここで字下げ終わり]
午前は元寛さん来訪、夜は馬酔木居往訪、三人で餅を焼いて食べながら
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