朝湯のこゝろよさ、それを二重にする朝酒のうまさ。

 一月廿五日[#「一月廿五日」に二重傍線] また雨。

午後、稀也さんを見送るべく熊本駅まで出かけたが、どうしても見出せなかつた、新聞を読んで帰つてくると、間もなく馬酔木さんが来訪、続いて元寛さんも来訪、うどんを食べて、同道して出かける、やうやくにして鑪板を買つて貰つた(今夜もまた元寛君のホントウのシンセツに触れた)。
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 また降りだしてひとり
・ぬかるみ、こゝろ触れあうてゆく
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 一月廿六日[#「一月廿六日」に二重傍線] 雨、終日終夜、鉛筆を走らせる。

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 凩の葉ぼたんのかゞやかに
・いちにちいちりんの水仙ひらく
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 一月廿七日[#「一月廿七日」に二重傍線] 晴れて寒い。

一杯やりたいが、湯銭さへもない。
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・握りしめるその手のヒビだらけ
 暮れて寒い土を掘る寒い人
 けふも出来そこなひの飯で寒い
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 一月廿八日[#「一月廿八日」に二重傍線] 晴、霜、ありがたい手紙が来た、来た、来た。

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