・餅二つ、けふのいのち
 ホウレン草の一把一銭ありがたや
 うらゝかにいたづらに唄うて乞うてゐる
                   (ルンペンに)
 生きたくてドツコイシヨ唄うてあるく
 巷に立つて運命を説いてる髯
   有田洋行会の象をうたふ
 象も痩せて鼻のばす身体《カラダ》うごかす
 なんぼ食べても食べ足りない象はうごく
 さぞ寒からう象にもフトンがない
 しきりに鼻をふる象に何かやれ
 鼻をさしのべる象には食べるもの
 愛嬌ふりまく象はメクラだつたのか
 君ヶ代吹いてオツトセイは何ともない
[#ここで字下げ終わり]

 一月廿日[#「一月廿日」に二重傍線] うらゝか、今日の昨日を考へる、微苦笑する外はない。

すまなかつた、寥平さんにも、彼女にも、私自身にも、――しかし、脱線したのぢやない、それだけまた心苦しい。
苦味生さんから来信、あたゝかい、あたゝかすぎる、さつそく返信、そして寝る、悪夢はくるなよ。
自分が見え坊[#「見え坊」に傍点]だつたことに気付いて、また微苦笑する外なかつた、といふのは、私は先頃より頭部から顔面へかけて痒いものが出来て困つてゐる、それへテイリユウ膏
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