て私も閉ぢ籠つて読んだり書いたりした。

夕方から散歩、ぶら/\歩きまはる、目的意識なしに――それが遊びだ[#「遊びだ」に傍点]――そこに浄土がある、私の三八九がある!
また逢うてまた別れる、逢ふたり別れたり、――それが世間相! そして常住だよ。
こゝの家庭はずゐぶんやゝこしい、寄合世帯ぢやないかと思ふ、爺さんはガリ/\、婆さんはブク/\、息子は変人、娘は足りない、等、等、等、うるさいね。
[#ここから2字下げ]
・凩に明るく灯して母子です
 凩のラヂオをり/\きこえる
 闇夜いそいで戻る馬を叱りつゝ
 凩、餅がふくれあがる
・のび/\と尿してゐて咎められた
[#ここで字下げ終わり]

 一月十九日[#「一月十九日」に二重傍線] けふもよい晴れ、朝湯朝酒、思無邪。

朝湯の人々、すなはち、有閑階級の有閑老人もおもしろい、寒い温かい、あゝあゝあゝの欠伸。
濁酒を飲む、観音像(?)を買ふ、ホウレン草を買ふ。
元寛さんを訪ねて、また厚意に触れた、馬酔木さんに逢うて人間のよさに触れた。
[#ここから2字下げ]
・日向ぼつこする猫も親子
 小春日、仏像を買うて戻つた
 日向ぬくうしてませた児だ

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