へ投げこんだ無心状
・ぬかるみをきてぬかるみをかへる
[#ここで字下げ終わり]
不幸はたしかに人を反省せしめる、それが不幸の幸福だ、幸福な人はとかく躓づく、不幸はその人を立つて歩かせる!

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……へんてこな一夜だつた、……酔うて彼女を訪ねた、……そして、とう/\花園、ぢやない、野菜畑の墻を踰えてしまつた、今まで踰えないですんだのに、しかし早晩、踰える墻、踰えずにはすまされない墻だつたが、……もう仕方がない、踰えた責任を持つより外はない……それにしても女はやつぱり弱かつた。……

 一月十七日[#「一月十七日」に二重傍線] 晴、あたゝかだつたが、私の身心は何となく寒かつた。

帰途、薬湯に入つてコダハリを洗ひ流す、そして一杯ひつかけて、ぐつすり寝た、もとより夢は悪夢にきまつてゐる、いはゞ現実の悪夢だ。
今日は一句も出来なかつた、心持が逼迫してゐては句の出来ないのが本当だ、退一歩して、回光返照の境地に入らなければ、私の句は生れない。

 一月十八日[#「一月十八日」に二重傍線] 晴、きのふもけふもよいお天気だつた、そし
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