けてゆける、めい/\嘘のない道を辿りませう、といふ意味の返事を出しておいた。
昨夜も夜明けの鶏がうたふまで眠らなかつた、いろ/\の事――おもに、三八九の事――が気になつて寝つかれなかつたのである、私も案外、小児病的で恥づかしい。
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雪もよひ、飯が焦げついた
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 一月十四日[#「一月十四日」に二重傍線] 曇、降りさうで降らない雪模様。しかし、とにかく、炬燵があつて粕汁があつて、そして――。

東京の林君から来信、すぐ返信を書く、お互に年をとりましたね、でもまだ色気がありますね、日暮れて途遠し、そして、さうだ、そしてまだよぼ/\してゐますね。……
先夜の吹雪で吹きとばされた綿入遂に不明、惜しい品でないだけ、それだけ考へさせる。
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 雪空、痒いところを掻く
 雪空、いつまでも女の話で(隣室の青年達に)
・雪の日の葱一把
・一把一銭の根深汁です
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 一月十五日[#「一月十五日」に二重傍線] 晴、三寒四温といふがじつさいだ。

少々憂欝である(アルコールが切れたせいか)、憂欝なんか吐き捨てゝしまへ、米
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