・逢うて戻ればぬかるみ
・十分に食べて雪ふる
雪の夜半の誘惑からのがれてきた
寒[#(ン)]空、二人連れは男と女
[#ここで字下げ終わり]
一月十二日[#「一月十二日」に二重傍線] 曇、陰欝そのものといつたやうな天候だ。
外は雪、内は酒――憂欝を消すものは、いや、融かすものは何か、酒、入浴、談笑、散歩、等、等、私にあつては。
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雪の葉ぼたんの枯れるのか
曇り日の重いもの牽きなやむ
・凍[#(テ)]土をひた走るバスも空つぽ
・雪ふる何も五十銭
[#ここで字下げ終わり]
夕方から熊本へ出かける(こゝも市内だけれど、感じでは出かけるのだ)、元寛さん馬酔木兄さんに逢ふ、別れて宵々さんを訪ねる、御夫婦で餅よ飯よと歓待して下さる(咄、酒がなかつた、などといふな)、私はこんなに誰もから歓待されていゝのだらうか。
一月十三日[#「一月十三日」に二重傍線] 曇、今日もまた雪でも降つて来さうな。
苦味生さんから、方向転換の手紙が来た、苦味生さんの気持は解る(苦味生さんに私の気持が解るやうに)、お互に、生きる上に於て、真面目であるならば、人間と人間とのまじはりをつゞ
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