にがいものはない、――酒ではさんざ苦労した、苦労しすぎた。……
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雪の葉ぼたんのしゞま
さら/\ふりつむ雪見ても
雪夜、隣室は聖書ものがたり
・ヤス[#「ヤス」に「安」の注記]かヤスかサム[#「サム」に「寒」の注記]かサムか雪雪(ふれ売一句)
吹雪吹きこむ窓の下で食べる
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一月十一日[#「一月十一日」に二重傍線] 曇つて晴れる、雪の後のなごやかさ。
いつものやうに、御飯を炊いて、そして汁鍋をかけておいて湯屋へ。――
あんまり寒いから一杯ひつかける、流行感冒にでもかゝつてはつまらないから、といふのはやつぱり嘘だ、酒好きは何のかのといつては飲む、まあ、飲める間に飲んでおくがよからう、飲みたくても飲めない時節があるし、飲めても飲めない時節がある。……
事実を曲げては無論いけない、といつて、事実に囚へられては、また、いけない(句作上に於て殊に然り)。
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あるだけのものを着てあたゝかうをる
・かあいらしい雪兎が解けます
・豆腐屋さんがかちあつた寒い四ツ角
雪の朝の郵便も来ない
雪の夕べをつゝましう生きてゐる
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