と塩と炭[#「米と塩と炭」に傍点]とがあるぢやないか。
夕方からまた出かける(やつぱり人間が恋しいのだ!)、馬酔木さんを訪ねてポートワインをよばれる、それから彼女を訪ねる、今夜は珍らしく御気嫌がよろしい、裏でしよんぼり新聞を読んでゐると、地震だ、かなりひどかつたが、地震では関東大震災の卒業生だから驚かない、それがいゝ事かわるい事かは第二の問題として。
けふは家主から前払間代の催促をうけたので、わざ/\出かけたのだつたが、馬酔木さんには何としてもいひだせなかつた、詮方なしに、彼女に申込む、快く最初の無心を聞いてくれた、ありがたかつた、同時にいろ/\相談をうけたが!
彼女のところで、裏のおばさんの御馳走――それは、みんなが、きたないといつて捨てるさうなが――をいたゞく、老婆心切[#「切」に「マヽ」の注記]とはおばさんの贈物だらうか、みんなは何といふ罰あたりどもだらう、じつさい、私は憤慨した、奴[#「奴」に「マヽ」の注記]鳴りつけてやりたいほど興奮した。
今日で、熊本へ戻つてから一ヶ月目だ、あゝこの一ヶ月、私は人に知れない苦悩をなめさせられた、それもよからう、私は幸にして、苦悩の意義を体験し
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