コスモス
・しぐるゝや道は一すぢ(旧作)
・ほがらかさ一家そろうて刈りすゝむ
・秋の山路のおへんろさん夫婦づれ
・秋はいちはやく山の櫨を染め
・崖はコンクリートの蔦紅葉
いたゞきの枯すゝきしづもるまなし
旅の人々が汽車の見えなくなるまでも
山路下りて来てさこんた[#「さこんた」に傍点]
嫌な声の鴉が一羽
・山の一つ家も今日の旗立てゝ(旗日)
・峰のてつぺんの樹は枯れてゐる
・さみしさは松虫草の二つ三つ
枯草に残る日の色はかなし
日が落ちかゝるその山は祖母山
暮れてなほ耕す人の影の濃く
軒も傾いたまんま住んでゐる
[#ここで字下げ終わり]
さすがに山村だ、だいぶ冷える、だらけた身心がひきしまるやうである、山のうつくしさ水のうまさはこれからである。
『空に遊ぶ』といふことを考へる、私は東洋的な仏教的な空の世界におちつく外はない。
台湾蕃婦の自殺記事は私の腸を抉つた、何といふ強さだ。
十一月五日[#「十一月五日」に二重傍線] 曇、三重町行乞、宿は同前。
昨夜は蒲団長く夜長くだつた、これからは何よりもカンタン(フトンの隠語)がよい宿でなければかなはない、此宿は主婦が酌婦
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