――何のための出家ぞ、何のための行脚ぞ、法衣に対して恥づかしくないか、袈裟に対して恐れ多くはないか、江湖万人の布施に対して何を酬ゐるか――自己革命のなさざるべからざるを考へざるを得なかつた(この事実については、もつと、もつと、書き残しておかなければならない)。
村の共同浴場、一銭風呂といふのを宿のおばさんに教へられて、行つてみたが駄目だつた、まだ沸いてゐなかつた、それにしても丘をのぼり、墓場を抜け、農家の間を抜けて、風呂場へ行くとは面白いではないか。
今日も此宿で、修行遍路ではやつてゆけない実例と同宿した、こんなに不景気で、そしてこんなに米価安では誰だつて困る、私があまり困らないですむのは、袈裟の功徳と、そして若し附け加へることを許されるならば、行乞の技巧とのためである。
入浴、そして一杯ひつかける、――これで今日の命の終り!
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・ひとりきりの湯で思ふこともない
 旅のからだでぽり/\掻く
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 十月廿八日[#「十月廿八日」に二重傍線] 曇、雨、行程三里、富高町、成美屋(特二五・上)

おぼつかない空模様である、そしてだいぶ冷える、もう単衣
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