そのおべんたうをかみしめてあなたがたのこと
 いたゞいたハガキにこま/″\書いておくる
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 十月廿三日[#「十月廿三日」に二重傍線] 曇、雨、佐土原町行乞、宿は同前。

あぶないお天気だけれど出かける、途中まで例の尺八老と同行、彼はグレさんのモデルみたいな人だ、お人好しで、怠け者で、酒好きで、貧乏で、ちよい/\宿に迷惑もかけるらしい。
降りだしたので正味二時間位しか行乞出来なかつた、やつと宿銭と飯米とを貰つて帰つてきた、一杯ひつかけたのと尺八老に一杯あげたのとだけは食ひ込みだ、煙草は貰つてきた朝日とバツト、それも一本づつ同宿者におせつたいした。
行乞中、不快事が一つ、快心事が一つ、或る相当な呉服店の主人の非人情的態度と草鞋を下さつたお内儀さんの温情とである(草鞋は此地方に稀なので殊に有難かつた)。
シヨウチユウと復縁したおかげで、朝までぐつすりと寝た、金もなく心配もなしに。
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めくらの爺さんで唄うたうてゐる
穿いて下さいといふ草鞋を穿いて
笠に巣喰うてゐる小蜘蛛なれば
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まだ孤独気分にかへれない、家庭気分を嗅いだ後
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