て)、それでよいではないか、それで安んじてゐるやうでなければ行乞流浪の旅がつゞけられるものぢやない。
この宿はひろ/″\として安易な気持でゐられるのがよい、電燈の都合がよろしいと申分ないが。
昨日今日すつかり音信の負債を果したので軽い気になつた、ゲルトの負債も返せると大喜びなのだけれど、その方は当分、或は永久に見込みないらしい。
句もなく苦もなかつた、銭もなく慾もなかつた、かういふ一日が時になければやりきれない。

 十月十四日[#「十月十四日」に二重傍線] 晴、都城市街行乞、宿は同前。

八時半から三時半まで行乞、この行乞のあさましさを知れ、そこには昨日休んだからといふ考へがある、明日は降るかも知れないといふ心配がある、――こんなことで何が行乞だ、行脚と旅行の目的欄に記したが(宿帳に)、恥づかしくはないか。
どこの庭にも咲いてゐる赤い花、それはサルピ[#「ピ」に「マヽ」の注記]ヤといふのださうな、何とかふさはしい和名がありさうなものだ、花そのものが日本的だから。
同宿の薬屋さん、とう/\アクセントで鮮人といふことが解つた、どんなに内地化したつて鮮人は遂に鮮人だつた、こに[#「こに」に
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