さだつた。

 十月八日[#「十月八日」に二重傍線] 晴、后曇、行程三里、榎原、栄屋(七〇・上上)

どうも気分がすぐれないので滞在しようかとも思つたが、思ひ返して一時出立、少し行乞してこゝまで来た、安宿はないから、此宿に頼んで安く泊めて貰ふ、一室一人が何よりである、家の人々も気易くて深切だ。
やうやく海を離れて山へ来た、明日はまた海近くなるが、今夜は十分山気を呼吸しよう。
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・こんなにうまい水があふれてゐる
・窓をあけたら月がひよつこり
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日向の自然はすぐれてゐるが、味覚の日向は駄目だ、日向路で食べもの飲みものゝ印象として残つてゐるのは、焼酎の臭味と豆腐の固さとだけだ、今日もその焼酎を息せずに飲み、その豆腐をやむをえず食べたが。
よく寝た、人生の幸福は何といつたとて、よき睡眠とよき食慾だ、こゝの賄はあまりいゝ方ではないけれど(それでも刺身もあり蒲鉾もあつたが)夜具がよかつた、新モスの新綿でぽか/\してゐた、したがつて私の夢もぽか/\だつた訳だ、私のやうなものには好過ぎて勿躰ないでもなかつた。

 十月九日[#「十月九日」に二重傍線] 曇、
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