時雨、行程三里、上ノ町、古松屋(三五・上)

夜の明けないうちに眼がさめる、雨の音が聞える、朝飯を食べて煙草を吸うて、ゆつくりしてゐるうちに、雲が切れて四方が明るくなる、大したこともあるまいといふので出立したが、降つたり止んだり合羽を出したり入れたりする、そして二三十戸集つてゐるところを三ヶ所ほど行乞する、それでやつと今日の必要だけは頂戴した、何しろ、昨日は朝の別れに例のお遍路さんと飲み、行乞はあまりやらなかつたし、それにヤキがなくてリヨカンに泊つたので、一枚以上の食ひ込みだ(かういふ世間師のテクニツクを覚えて使ふのも、かういふ境涯の善し悪しだ)。
二時過ぎには宿についた、誰もが勧めるほどあつて、気持のよい家と人であつた。
傘を借り足駄を借りて、中ノ町を歩いて見る、港までは行けなかつた、福島町といふのは上ノ町、中ノ町、今町の三つを合せて延長二里に亘る田舎街である。
隣室は世間師坊主の四人組、多分ダフのゴミだらう、真言、神道、男、女、面白い組合だ。
今日の道は山路だからよかつた、萩がうれしかつた、自動車よ、あまり走るな、萩がこぼれます。
昨夜の女主人公は楽天家だつた、今夜の女主人公は家政
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