熟《ウ》れて垂れて稲は刈られるばかり
秋晴れの屋根を葺く
秋風の馬に水を飲ませる
水の味も身にしむ秋となり
・お天気がよすぎる独りぼつち
・秋の土を掘りさげてゆく
誰もゐないでコスモスそよいでゐる
剥《ハ》いでもらつた柿のうまさが一銭
[#ここで字下げ終わり]
行乞記の重要な出来事を書き洩らしてゐた――もう行乞をやめて宿へ帰る途上で、行きずりの娘さんがうや/\しく十銭玉を一つ報謝して下さつた、私はその態度がうれしかつた、心から頭がさがつた、彼女はどちらかといへば醜い方だつた、何か心配事でもあるのか、亡くなつた父か母でも思ひ出したのか、それとも恋人に逢へなくなつたのか、とにかく、彼女に幸あれ、冀くは三世の諸仏、彼女を恵んで下さい。
十月五日[#「十月五日」に二重傍線] 晴、行程二里、油津町、肥後屋(三五・下)
ぶらり/\と歩いて油津で泊る、午前中の行乞相はたいへんよかつたが、午後はいけなかつた。
此宿の人々はみな変人だ、あとで聞いたら変人として有名なさうだ、おかみさんは会話が嫌ひらしい。
乞食にも見放された家、さういふ家がある、それは貧富にかゝはらない、人間らしからぬ人間
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