理法を加へたならばどんなに客が満足することだらう。
今日の行乞中に二人、昨日は一人の不遜な中年女にでくわした、古い型の旧式女性から、女のしほらしさ、あたゝかさ、すなほさを除いて、何が残るか!
子供が声張りあげて草津節をうたつてゐる、「草津よいとこ一度はおぢやれ、お湯の中にも花が咲く」チヨイナ/\、ほんとうにうまいものである、私はぢつとそれに耳を傾けながら物思ひに耽つてゐるのである、――此間の年数五十年相経ち申し候だらうな。
両手が急に黒くなつた、毎日鉄鉢をさゝげてゐるので、秋日に焼けたのである、流浪者の全身、特に顔面は誰でも日に焼けて黒い、日に焼けると同時に、世間の風に焼けるのである、黒いのはよい、濁つてはかない[#「い」に「マヽ」の注記]ない。
行乞中、しば/\自分は供養をうけるに値しないことを感ぜざるをえない場合がある、昨日も今日もあつた、早く通り過ぎるやうにする、貧しい家から全財産の何分一かと思はれるほど米を与へられるとき、或はなるたけ立たないやうにする仕事場などで、主人がわざ/\働く手を休ませて蟇口を探つて銅貨の一二□を鉄鉢に投げ入れてくれるとき。……
同宿の修行遍路――いづれ
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