流れる、独居自炊、いゝね。

寒い、寒い、忙しい、忙しい――我不関焉!
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枯草原のそここゝの男と女
葬式はじまるまでの勝負を争ふ
枯草の夕日となつてみんな帰つた
明日を約して枯草の中
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これらの句は二三日来の偽らない実景だ、実景に価値なし、実情に価値あり、プロでもブルでも。
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 やつと見つけた寝床の夢も
・餅搗く声ばかり聞かされてゐる
・いつも尿する草の枯れてゐる
・重たいドアあけて誰もゐない
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 十二月廿七日[#「十二月廿七日」に二重傍線] 晴、もつたいないほどの安息所だ、この部屋は。

ハガキ四十枚、封書六つ、それを書くだけで、昨日と今日とが過ぎてしまつた、それでよいのか、許していたゞきませう。
……やうやく、おかげで、自分自身の寝床をこしらへることができました、行乞はウソ、ルンペンはだめ、……などとも書いた。
前後植木畠、葉ぼたんがうつくしい、この部屋には私の外に誰だかゐるやうな気がする、ゐてもらひたいのではありませんかよ。
数日来、あんまり歩いたので(草鞋を穿いて歩くのには屈托しないが
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