るために、――なか/\埓があかない、ブルヂヨアぶりも気にくはない、パンフレツトをだすのに不便でもある、――すつかり嫌になつて方々を探しまはる、九品寺に一室あつたけれど、とてもおちつけさうにない、それからまた方々を探しまはつて、もう諦めて歩いてゐると、春竹の植木畠の横丁で、貸二階の貼札を見つけた、間も悪くないし、貸主も悪くないので、さつそく移つてくることにきめた、といつて一文もない、緑平さんの厚情にあまえる外ない。

 十二月廿五日[#「十二月廿五日」に二重傍線] 晴、引越か家移か、とにかくこゝへ、春竹へ。

緑平さんの、元寛さんの好意によつて、Sのところからこゝへ移つて来ることが出来た。……
[#ここから2字下げ]
 大地あたゝかに草枯れてゐる
・日を浴びつゝこれからの仕事考へる
   追加一句
 歩きつかれて枯草のうへでたより書く
[#ここで字下げ終わり]
だん/\私も私らしくなつた、私も私の生活らしく生活するやうになつた、人間のしたしさよさを感じないではゐられない、私はなぜこんなによい友達を持つてゐるのだらうか。

 十二月廿六日[#「十二月廿六日」に二重傍線] 晴、しづかな時間が
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