かへるふるさとの山の濃き薄き
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十二月廿二日[#「十二月廿二日」に二重傍線] 曇、晴、曇、小雪、行程五里、本妙寺屋。
一歩々々がルンペンの悲哀だつた、一念々々が生存の憂欝だつた、熊本から川尻へ、川尻からまた熊本へ、逓信局から街はづれへ、街はづれから街中へ、そして元寛居であたゝかいものをよばれながらあたゝかい話をする、私のパンフレツト三八九、私の庵の三八九舎もだん/\具体化してきた、元坊の深切、和尚さんの深切に感謝する、義庵老師が最初の申込者だつた!
寒くなつた、冬らしいお天気となつた、風、雪、そして貧!
十二月廿三日[#「十二月廿三日」に二重傍線] 曇、晴、熊本をさまよふてSの家で、仮寝の枕!
けふも歩きまはつた、寝床、寝床、よき睡眠の前によき寝床がなければならない、歩いても/\探しても/\寝床が見つからない、夕方、茂森さんを訪ねたら出張で不在、詮方なしに、苦しまぎれに、すまないと思ひながらSの家で泊る。
十二月廿四日[#「十二月廿四日」に二重傍線] 雨、彷徨何里、今夜もSの厄介、不幸な幸福か。
また清水村へ出かけてA家を訪問する、森の家を借り
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