社で雑誌を読みながら待つてゐたら、例のスタイルで元寛さんがやつてきた(馬酔木さんはおくれて逢へなかつたので残念)、連れ立つて出町はづれの若い産婆さん立石嬢を訪ね、案内されて住む人もなく荒れるにまかした農家作りの貸家へ行く、とても住めさうにない、広すぎる、暗すぎる――その隣家の一室に間借して独占してゐる五高生に同宿を申込んで家主に交渉して貰ふ、とても今日の事にはな[#「はな」に「マヽ」の注記]い、数日後を約して、私は川尻へ急行する、途中一杯二杯三杯、宿で御飯を食べて寝床まで敷いたが、とても睡れさうもないし、引越の時の事もあるので、電車でまた熊本へ舞ひ戻る、そして彼女を驚かした、彼女もさすがに――私は私の思惑によつて、今日まで逢はなかつたが――なつかしさうに、同時に用心ぶかく、いろ/\の事を話した、私も労れと酔ひとのために、とう/\そこへ寝込んでしまつた、たゞ寝込んでしまつたゞけだけれど、見つともないことだつた、少くとも私としては恥ざらしだつた。
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枯草ふんで女近づいてくる
枯草あたゝかう幸福な二人で(元寛君へ)
・住みなれて枯野枯山
・道はでこぼこの明暗
・ふり
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