づけて、雨支度をして出かけた、川尻――春竹――砂取――新屋敷――休みなしに歩いたが、私にふさはしい部屋も家もなか/\見つからない、夕方、逓信局に馬酔木さんを訪ね、同道してお宅で晩餐の御馳走になる、忙しい奥さんがこれだけの御馳走をして下さつたこと、馬酔木さんが酒好きの私の心持を察して飲まして下さつたこと、そして舅さんが何かと深切に話しかけて下さつたこと、ありがたい、/\、そしてまた同道して元寛居へ推参する、雑談にも倦んでそれ/″\の寝床へいそぐ、おちつけない一日々々である、あはたゞしい一日々々である、よき食慾とよき睡眠、そしてよき食物とよき寝床。
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・今夜の寝床を求むべくぬかるみ
与へられた寝床の虱がうごめく
・降つたり照つたり死場所をさがす
狂人《キチガイ》が銭を数へてるま夜中の音
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嫌な夢から覚めたら嫌な声がするので、何ともいへない気分になつた、嫌な一夜、それはおちつかない一日の正しい所産だ。
十二月廿一日[#「十二月廿一日」に二重傍線] 晴后曇、行程五里、熊本市。
昨夜、馬酔木居で教へられた貸家を見分すべく、十時、約束通り加藤
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