/\乞食坊主になりきれるらしい、喜んでいゝか、悲しの[#「しの」に「マヽ」の注記]か、どうでもよろしい、なるやうになれ、なりきれ、なりきれ、なりきつてしまへ。
十二月十九日[#「十二月十九日」に二重傍線] 晴、行程二里、川尻町、砥用屋(四〇・中)
まつたく一文なしだ、それでもおちついたもので、ゆう/\と西へ向ふ、三時間ばかり川尻町行乞、久しぶりの行乞だ、むしやくしやするけれど、宿銭と飯代とが出来るまで、やつと辛抱した。
宿について、湯に入つて、ほつとする、行乞は嫌だ、流浪も嫌だ、嫌なことをしなければならないから、なほ/\嫌だ。
安宿といふものは面白いところだ、按摩さん、ナフタリン売、土方のワタリ、へぼ画家、お遍路さん、坊主、鮮人、等、等、そして彼等の話の、何とみじめで、そして興ふかいことよ。
十二月二十日[#「十二月二十日」に二重傍線] 雨、曇、晴、行程四里、本妙寺屋(可、不可、四〇・下、上)
雨に間違いない空模様である、気の強い按摩さん兼遊芸人さんは何のこだはりもなく早く起きて出ていつた、腰を痛めてゐる日本的鮮人は相かはらず唸つてゐる、――間もなく降りだした、私は荷物をあ
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