つめたい眼ざめの虱を焼き殺す
・師走ゆきこの捨猫が鳴いてゐる
 よい事も教へられたよいお天気
・霧、煙、埃をつきぬける
・石地蔵尊へもパラソルさしかけてある
 のぼりくだりの道の草枯れ
 明るくて一間きり(苦味生居)
・柵をくゞつて枯野へ出た
 子供になつて馬酔木も摘みます
 夕闇のうごめくは戻る馬だつた
 八十八才の日向のからだである(苦味生さん祖母)
[#ここで字下げ終わり]
さびしいほどのしづかな一夜だつた、緑平さんへ長い手紙を書く、清算か決算か[#「清算か決算か」に傍点]、とにかく私の一生も終末に近づきつゝあるやうだ、とりとめもない悩ましさで寝つかれなかつた、暮鳥詩集を読んだりした、彼も薄倖な、そして真実な詩人だつたが。
我儘[#「我儘」に傍点]といふことについて考へる、私はあまり我がまゝに育つた、そしてあまり我がまゝに生きて来た、しかし幸にして私は破産した、そして禅門に入つた、おかげで私はより我がまゝになることから免がれた、少しづゝ我がまゝがとれた、現在の私は一枚の蒲団をしみ/″\温かく感じ、一片の沢庵切をもおいしくいたゞくのである。

 十二月十五日[#「十二月十五日」に
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